保育士として知っておきたい発達障がいの子どもとの関わり方と対応のケーススタディ!

発達障がいの子どもへの対応の難しさや気づかいなどから、気を病んでしまう保育士が増えています。 文部科学省が令和4年に発表した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する 調査結果について 」の調査結果によると、発達障がいの可能性がある小中学生の割合は、全体で8.8%にも上ると言われており、その前段階である保育園の園児にも一定数の割合がいると予測されています。 発達障がいの子どもは、コミュニケーションを取ることなどが苦手で、周囲に理解されなかったり、場合によっては他害がみられることも少なくありません。 集団保育を行う保育園で、発達障がいのある子どもの保育に当たるには、常にその行動への対応などを考えて動かなければならない分プレッシャーを感じてしまう保育士も多いのが現状です。 また、特に見た目ですぐにわかる障がいと違い、発達障がいがあることに保護者自体が気づいていなかったり、0歳児から保育している場合は、その成長の過程で発覚することもあります。 保護者がしっかりと子どもの発達障がいを認知していればよいですが、中には発達障がいの兆候に気づいておらず、単に「人見知りな子」「物静かな子」「変わった子」など、個性として捉えているケースも珍しくありません。 そして、保育士は発達障がいの診断をできるわけではありません。 非常にセンシティブな問題なだけに、保護者に伝えるタイミングや伝え方なども慎重に行わなければ、保護者とのトラブルになる可能性もあります。 そのため、発達障がいの子どもの保育をする保育士には、精神的にも肉体的にも大変な負荷がかかってくると言われ、気を病んでしまうケースが増えてきているのです。 発達障がいの子どもの適切な対応方法を保育士自身が持っておくことが、重要だと言われています。 そこで今回は、発達障がいの子どもの特徴や、保育士として発達障がいを抱える子ども、そしてその保護者への適切な対応についてご紹介します。

記事監修:ずっと保育士 編集部

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そもそも発達障がいとは?

「発達障がい」とは、脳の成長の仕方が通常とは異なるために生じる、生まれつきの特性です。 発達障がいの発症原因はいまだよく分かっていません。 日常生活を送る際に支障をきたすこともありますが、病気ではないと言われています。 発達障がいは、先天的な脳の特性であるため、基本的に生まれてから死ぬまでその特徴は続くと言われます。 ただし、目に見える障がいではないため、生後すぐに診断がおりることはありません。 3歳ごろから診断が可能なケースもありますし、大人になってから発覚するケースもあります。 一般的には、発達障がいのある子どもとの関わりで大切なのは、その子どもの特性を周囲が理解し、子どもがストレスを感じにくい環境を作ってあげることだと言われています。 早期に気付くことができれば、避けられる困難もたくさんあるため、今はなるべく早くその特性に気づき、療育など適正な環境を提供できるよう社会的な支援も増えています。 そんな中、特に保育士は、子どもの特性に気付きやすい環境にあるとされています。 子どもを観察する中で気になる点があったら、しっかりと受け止め、自分だけでは解決や対応が難しい場合には、先輩や園長などに報告し、適切な対応についてチームで対処していくことが重要になります。

発達障がいの各タイプの特徴

発達障がいの各タイプの特徴
発達障がいは、「広汎性発達障がい」と「注意欠陥多動性障がい」、「学習障がい」の大きく3つのタイプに分けられます。 詳しくは後の章にて説明しますが、大きくいうと下記の表のような特徴に分けることができます。 表1:発達障がいの分類と特徴
広汎性発達障がい コミュニケーションと社会性に障がいがあり、強いこだわりや繰り返し行動など常同的な行動がある
注意欠陥多動性障がい 集中力がない、じっとしていられない、考えずに行動してしまうなど
学習障がい 知的発達遅れはなく、学習における「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推論する」という能力のなかの特定のものに著しい欠陥がある
一口に発達障がいといっても、これらのいずれか1つに当てはまる場合もあれば、複数のタイプの発達障がいを併せ持つ場合もあります。 また、症状には個人差があるため、発達障がいであることがなかなか分からないケースが多いことも特徴です。 ここからは、それぞれどのような特徴があるか、詳しく説明します。

広汎性発達障がい

広汎性発達障がいとは、コミュニケーションと社会性に障がいがあり、強いこだわりや繰り返し行動など常同的な行動があることが特徴の発達障がいです。 常同的とは、何かに駆り立てられているように目的のない行動を繰り返すことです。 行動のレパートリーは様々で、身体や頭を揺すったり、両手をバタバタさせたり、手を叩いたり指をはじいたりすることなどで、こういった行動が広汎性発達障がいに気がつくきっかけとなることもあります。 広汎性発達障がいの中には自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障がい、特定不能の広汎性発達障がいという5つの障がいが含まれています。 広汎性発達障がいの中でも特に、自閉症やアスペルガー症候群がよく知られていますが、自閉症の半数以上が知的障がいを伴うのに対して、アスペルガー症候群は言葉の発達の遅れが伴わない「知的障がいのない自閉症」と言われています。 発達の過程で、いくつかの障がいが同時に起こるものもあり、早ければ1歳半ごろに疑いがもたれ、3歳以降に診断されます。 主に次のような行動が見られることが特徴です。
・視線が合わない ・言葉が出ない ・指さしをしない ・同じ行動を繰り返す ・人まねをしない ・表情が乏しい ・ごっこ遊びをしない ・友だちに興味を示さない ・順序や決まりに異常にこだわる ・突然大声を出したり、泣いたり、笑ったりする

注意欠陥多動性障がい(ADHD)

注意欠陥多動性障がいとは、集中力がない、じっとしていられない、考えずに行動してしまうなど、大きく3つの症状がみられることが特徴的な発達障がいです。 注意欠陥多動性障がいは、英語名略称のADHD(エーディーエイチディー)とも呼ばれます。 年齢や発達に不釣り合いな行動が、社会的な活動や学業に支障をきたすこともあり、そわそわして落ち着きがなく、衝動的に行動したり、集中力が続かず、注意力も散漫で、忘れ物や聞き逃しが多くなるなどの症状がきっかけで、7歳ごろまでに発覚することが多いとされます。 ただし、集団での行動を開始する3歳以降でも顕著に見られることがあり、早い場合は4歳以降に正式な診断がなされます。 主に次のような行動が特徴の発達障がいです。
・遊びや活動に集中できない、すぐに飽きる ・呼びかけに応じない ・指示を理解しない、従わない ・持ち物の取り違えが多い ・ものをよくなくす ・じっと座っていられず、立ち歩いたり寝転んだりする ・走り回り、高いところに上るなど、落ち着かない ・手足を意味なくそわそわと動かす ・過剰にしゃべりすぎる ・順番を待てない ・友だちに手を出すなど、邪魔をする

学習障がい(LD)

学習障がいの子どもは、知的発達遅れはなく、学習における「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推論する」という能力のなかで、特定のものに著しい欠陥が生じるとされ、英語名略称のLDとも呼ばれます。 障がいの影響が顕著に現れるのは、義務教育が開始される小学校以降ですが、読み書きや数などに興味を持ち始める3歳ごろに発見されることがあります。 文部科学省の調査によると、小中学校に通う普通学級の生徒のおよそ4.5%は学習障がいの症状があるとも言われ、クラスに1名程度は存在するという決して珍しい障がいではありません。 学習障がいの特徴は、決してやる気がないからできないわけではないということです。 真面目に勉強にも授業にも取り組むけれど、できないという苦しみは本人が一番感じているところです。 繊細な心を傷つけないためにも、学習障がいの子どもへの接し方はとても大切となります。 次のような行動が特徴的だと言われています。
・言葉の言い間違い、聞き返しがとても多い ・落ち着きがない ・友だちと遊べない ・歩き方がおかしい、よく転ぶ ・靴をよく左右間違えてはいている ・はさみが使えない、折り紙、のりづけなどができない ・ボタンのかけはずしがなかなかできない ・できることとできないことの差が激しい

保育士としての発達障がいの子どもとの関わり方

発達障がいと一口に言っても、早期の発見で社会に適応できるように訓練を行うことはできます。 その訓練をする年齢は、早ければ早いほど効果があるとも言われていますし、発達障がいを持ちながら社会で活躍している人はたくさんいらっしゃるので、全く不安に思う必要はありません。 そのため、保育士はいち早く発達障がいのある子どもの変化に気づき、適切に対応することが求められ、日頃から子どもの発言や行動に注意を向けておくことが大切です。 端的に言えば、子ども一人ひとりの個性を受け入れた対応を保育園全体でしていくことが大切になってきます。 例えば、自閉症スペクトラム障がいがある子どもの場合、こちらの指示を良く理解できるように、簡潔で分かりやすい指示を心掛けましょう。 イラストを描いたカードを用いて、視覚的に理解させることも効果があります。 学習障がいについても、園児の苦手な分野を理解して、スタッフが連携して保育にあたることが大切です。 学習障がいと思われる特徴が数度見られたからといって、すぐに発達障がいがあると断定することはできません。 ゆっくりと物事を理解する子どもも大勢います。 いずれの場合も、困っているのは子ども自身です。 発達障がいの子どもの周辺を見ると、その保護者や保育士などが困っているように感じることがあります。 しかし、実は発達障がいを抱える子ども自身が一番に困っており、周囲がわかってくれない孤独を感じていたり、気持ちを表せずに癇癪を起こしているということを前提に考えて見てください。 子どもの気持ちを真に受け止め、成長を促して行くためのヒントになるでしょう。 ここからは、発達障がいの子どもに見られる傾向と、それに対してどのような対応をすれば良いのか、ケースごとに見ていきます。

ケース1:なかなか思うように食べてくれない

発達障がいの子どもの中には、味覚が過敏で、刺激に弱く、濃い味が苦手、食べ物の形や色にこだわりがある子どもが多くいます。 また、においや温度に敏感で香りの強い食事や、熱すぎたり、冷たすぎたりするものが食べられないなど、思うように給食やおやつを食べてくれないことがあります。 保育園などの集団保育では、生活リズムを整えるためにも、時間区切りで動くことが多くなります。 また、食事は栄養やカロリーが計算されているので、子どもにとって必要だからと感じてしまうかもしれません。 しかし、発達障がいを抱える子どもたちは、こだわりが強くあるために「時間内になんでも全部食べる」ということができないこともあります。 そのような時は、それぞれの子どものこだわりをヒントに下記のような対応を試してみましょう。
・食材別に分けたり、色別に分けるなど、食べやすくする ・ 見た目の量で食欲をなくす場合もあるため、子どもの食べきれる量を出す ・苦手を無理強いせず、「残してもいいよ」「一口だけ頑張ってみよう」と声をかける ・ 少しでも食べられたらほめ、食事は楽しいものと感じられるようにする
もちろん、すぐにうまく行くわけではありませんが、それぞれの子どもの食事がなぜ進まないか、の原因は必ずあります。 子どもは自分の気持ちや、なぜ嫌なのかを的確に話すことはできないこともありますので、根気よく寄り添ってあげることで理解できるようになるでしょう。

ケース2:なかなか友だちと遊ぼうとしない。いつも一人で遊んでいる

2歳〜3歳ごろから、子どもたちは集団での遊びを始めます。 しかし、発達障がいを抱える子どもは、それらの輪の中に入れず、ポツンと一人で遊んでいることもあります。 その理由としては、「一緒に遊びたいけど、入り方がわからない」という消極的な理由もあれば、「友だちと遊ぶことに関心がない」と言った無関心な理由もあります。 また、一緒に遊びたい気持ちはあるものの、遊びのルールや、やり方が理解できずに、周囲の友達から仲間に受け入れてもらえないなどのケースもあります。 「一緒に遊びたいけど、入り方がわからない」という場合には、「入れて」「遊ぼう」など、遊びへの入り方を実際にやって見せたりして、保育士が身をもって教えてあげるようにしましょう。 「友だちと遊ぶことに関心がない」といった無関心な場合は、保育者との一対一の遊びから始め、人と遊ぶ楽しさ、人と関わることの楽しさを少しずつ理解してもらえるように接してみましょう。 また、遊びのルールや、やり方が理解できずに、周囲から受け入れてもらえないなどの場合は、遊びをコーナーごとに分け、何をしているのか理解しやすくしたり、遊びのルールを子どもの発達に合ったものに変えるなどし、保育者が仲介となって理解を深めるようにすることが重要です。

ケース3:親から離れると大泣きして、なかなか泣き止まない

親から離れると大泣きするのは、環境の変化への不安が大きいと言われます。 予測できないことへの不安感や恐怖感の強い子どもは、いつも保護してくれる親がそばにいないことで、パニックに陥る傾向にあります。 また、保育園など集団のざわざわした雰囲気が苦手だったり、人がいることそのものが苦手なこともあります。 感覚過敏な子どもにとっては、保育園などで行う粘土遊びや砂遊びなどの感覚を刺激する遊びが苦手なために、保育園に行くこと自体が嫌いになっている可能性もあります。 これらの場合は、基本的に心の安心を伝えてあげることが大切です。 登園後の今日のスケジュールを優しく教えてあげたり、母親の迎えにくる時間の目安などを示してあげることも有効でしょう。 「お昼寝をして、おやつを食べたら~するよ」など、具体的な示唆は子どもの安心感に繋がります。 また、感覚過敏や雰囲気の好みについては、子どもを観察することや保護者への聞き取りから判断することもできます。 できるだけリラックスする場所を見つけてあげたり、好きな遊びに誘って、ゆっくりでも気持ちの切り替えを誘発させてあげられるように工夫しましょう。

発達障がいの子どもを持つ保護者との関わり方

発達障がいの子どもを持つ保護者との関わり方
「何不自由なく、健やかに成長して欲しい」保護者なら誰でもそう願っています。 そのため、我が子が発達に困難を抱えているかもしれないと知った時の不安やショックは、想像を絶するものがあります。 人はショックや困難を知った時、まずは否認します。 その後、その事実がなかったかのように拒否をし、怒りをぶつけたり、落ち込んだりしながら、徐々に受け入れ、前向きな判断をすることができるようになると言われています。 発達障がいの子どもを持つ保護者との関わりの中では、その保護者がどのような気持ちで我が子の障がいに向き合っているかによって関わり方は大きく異なります。 まず重要なことは、発達障がいは「親のせいではない」ということを伝えることでしょう。 「障がいを持って産んでしまった」と自分を責め、後悔してしまう親心を理解し、「お父さんやお母さんは愛情をたっぷり注いでいる」ことへの肯定をしてあげましょう。 また、発達障がいの傾向に気がついていない保護者に対しても、心配な部分だけを伝えるのではなく、「〇〇な部分には素晴らしい才能がありますね、ただ■■な部分に少し心配なところがあります」などと言った、先に褒めることを忘れずに伝えてみましょう。 子どもの成長を共に支援するという気持ちを持って、保護者の気持ちに寄り添って共感して言葉を選ばなければ、不要なトラブルを招く元にもなります。 通常の保育であっても、子どもの成長を支援するには、保護者との信頼関係は必須ですが、発達障がいを抱える子どもについては、家庭と強固な信頼関係を持って、子どもの成長を見守ることが求められます。 発達障がいの子どもを支えるために、まずは保護者との信頼関係を何よりも大切にし、相手を思う気持ちを大切にしましょう。

発達障がいの子どもへの理解をより深めよう!

発達障がいについての話題がニュースで取り上げられるようになって以降、保護者の方にはより神経質になる方もいらっしゃれば、全く気にかけていない方もいらっしゃいます。 発達障がいは、生活支援への取り組みを早期に行うことで、将来の生活の困難を取り除くことができるとも言われています。 保育士が子どもに関わる主な時期は「0歳から6歳」です。 つまり、もしも保育士が発達障がいを発見した場合、かなり早期であり、この時期に診断された場合は、日々の生活の中で社会や集団に溶け込むことができる可能性が高まる時期であるともいえます。 「発達障がい」というと、保育することに大変なイメージもあります。 そして、発達障がいは病気とは異なりますので、治療で完治はできません。 しかし、接し方やステップを設けて支援することで、子どもの抱える困難を理解し、その子や保護者にとって、より良い環境に導いてあげることは可能です。 保育士が子どもたちの気になる行動への気付きは支援の第一歩です。 発達障がいに悩む子どもはもちろん、保護者一人ひとりに寄り添った対応をしていきましょう。
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