保育のコラム

保育士の家賃補助の種類や条件、支給期間をわかりやすく解説!

2024/01/27

保育士が一人暮らしを始める際や、就職や転職に伴う引越しの際に、家賃補助は非常に役立つ制度です。多くの人が就職や転職先を選ぶ際の重要な条件の一つとしてこの制度を考慮しています。

この記事では、保育士向けの家賃補助制度の種類、条件、地域ごとの違い、および支給期間について、分かりやすく解説しています。

 

保育士が受けられる家賃補助の種類

保育士が受けられる家賃補助制度には、様々な種類が存在します。これらは地域や勤務先の保育園によって異なり、それぞれの制度には独自の条件や規定が設けられています。補助の範囲、支給額、支給期間などが各制度ごとに特有の特徴を持っています。

 

保育園からの家賃補助(住宅手当)

保育園の福利厚生の一環として、家賃補助や住宅手当を提供する園があります。これらの支援は園によって異なり、例えば「家賃の上限○○円までの〇%を補助」や「一人暮らしの場合に月〇万円を補助」など、各園が独自の方法で支援を工夫しています。

 

保育園の寮・社宅制度

保育園や保育園を運営する経営主体(事業主)が提供する寮や社宅のような指定された住居についてです。これらの住宅は、通常勤務地の近くに位置しており、自分で部屋を探す手間が省けるというメリットがあります。さらに、同僚や上司が同じ建物に住むことが多いため、知り合いと近隣に住むことによる安心感があります。ただし、この状況はプライベートと仕事の区別をつけにくくするというデメリットも伴います。

 

国が実施する保育士宿舎借り上げ支援事業

国が提供する保育士宿舎借り上げ支援事業は、この制度を導入している自治体の保育園で働く保育士に対して、家賃の負担を軽減します。これにより、保育士の家賃負担はゼロ円、または月1~2万円程度の少額になることがあります。

この制度は、宿舎を借り上げる事業主を支援するためのものであり、保育士が直接受けるものではありません。したがって、保育園が指定する物件に住むのか、あるいは自分で探した部屋を借りることができるのかは、園によって異なるため、詳細については各園で確認することが重要です。

 

自治体によっては補助を拡充・縮小させている場合も

保育士宿舎借り上げ支援事業は国が主体となっていますが、この制度を導入する自治体によって、補助の内容や金額が異なります。一部の自治体では補助額を上乗せし、より充実した支援を提供している一方で、補助を減額し制度を縮小している自治体も存在します。また、この制度を導入していない自治体もあります。

 

国が実施する「保育士宿舎借り上げ支援事業」とは

ここでは、国が実施する「保育士宿舎借り上げ支援事業」について詳しく解説します。この制度は、保育士の住宅負担を軽減し、職場への定着を促進することを目的としています。制度の概要、対象となる保育士の条件、自治体による違いや補助内容など、重要な情報を網羅して説明します。

 

実施主体

この制度の実施主体は、国の「新子育て安心プラン」(待機児童解消を目的とする政策)に参加している区市町村です。ただし、この制度が全国のすべての地域で利用できるわけではなく、実施している地域は限定されています。

 

対象施設

この支援事業の対象となる施設は、都道府県や区市町村以外の主体が運営する認可保育所、認定こども園、地域型保育事業(小規模保育事業で小規模保育C型を除く)、事業所内保育事業(認可を受けたもの)、または「新子育て安心プラン」の対象となる認可外保育施設(公立を除く)に限られています。

 

対象者

この支援事業の対象者は、上記の保育所などに勤務する常勤の保育士です。常勤の基準は自治体によって異なり、正規雇用に限らず、週〇日以上かつ〇時間以上勤務する非正規雇用の保育士も対象となることがあります。また、保育士に限らず、看護師、保健師、栄養士など保育に従事する職員を対象としている自治体も存在します。

 

支給期間

元々、この支援事業の対象となる保育士は、採用されてから5年以内の者に限定されていました。しかし、要件が緩和され、現在は採用後10年以内の保育士も対象に含まれるように条件が拡大されています。ただし、自治体によっては、この期間を短縮している場合もあります。

 

住める物件

住居に関して、東京都内の条件は次のように異なります。一部の区では区内に住むことが条件とされていますが、他の区では通勤ルートが近ければ区外でも近隣なら許容されています。また、保育園によっては指定の寮を提供する場合と、一定の条件を満たせば自身で住居を探しても良い場合があります。

 

補助額

補助単価は、1人当たり月額82,000円を上限とし、補助割合は国の基準では、国が3/4を補助し、市町村が1/4の割合で補助する、つまり3/4補助とされています。ただし、保育園や事業主(保育園の運営者)によって、保育士の負担があるかどうかは異なる場合があります。

 

保育士宿舎借り上げ支援事業の実施例

保育士宿舎借り上げ支援事業は、自治体ごとに異なる条件で実施されています。以下は、具体的な自治体の事例をいくつか紹介します。

 

東京都

保育士宿舎借り上げ支援事業の補助割合は、国の施策では、国1/2、市町村1/4の合計3/4とされていますが、東京都では、国・都で3/4、区市町村で1/8、計7/8負担と規定されています。その結果、事業者の負担割合は1/8と低くなっています。

さらに、一部の区では独自の補助策を提供しており、上京を希望する保育士にとって非常に魅力的な制度と言えます。

特に、手厚い家賃補助を提供している区の具体的な事例をご紹介いたします。

 

事例:千代田区

区内に住む場合のみ、月額48,000円まで10/10負担での加算が設けられています。(区外の住居はあてはまりません)つまり、家賃の上限補助額は以下のようになります。

区内 119,750円(月額1戸あたり)家賃上限 130,000円
区外   71,750円(月額1戸あたり)家賃上限   82,000円

 

神奈川県

神奈川県においても、保育士宿舎借り上げ支援事業において手厚い補助策が提供されています。以下に、神奈川県横浜市の特徴的な補助内容を紹介いたします。

 

事例:横浜市

補助基準上限金額は、一戸当たり月額82,000円、

補助割合は、借り上げた宿舎の家賃と共益費・管理費の合算額(補助基準額)の3/4を補助金として法人に支給。残りは法人が負担するよう定めています。

対象となるのは、横浜市内の保育所等(私立の認可保育所、認定こども園、小規模保育事業、移行計画書の承認を受けた横浜保育室、事業所内保育室、家庭的保育事業)に勤務する常勤保育士です。

 

千葉県

千葉県で家賃補助が手厚い自治体は、浦安市があげられます。

 

事例:浦安市

市内の保育所等で働く保育士・看護師を対象に、1戸当たり月額80,000円を家賃の上限として補助しています。補助割合は、7/8 が国と自治体で補助、1/8は事業主が負担すると定められています。保育士の負担はゼロになります。

賃借料・共益費(管理費)の他、礼金及び更新料も経費に含みます。

 

埼玉県

埼玉県の中でも、戸田市は家賃補助が手厚い市の一つとして知られています。以下に、戸田市の家賃補助に関する特徴を紹介いたします。

 

事例:戸田市

補助基準上限金額は、一戸当たり月額79,000円、補助割合は13/16、残り3/16を事業主が負担するよう定められています。対象者は、戸田市内私立保育所等(戸田市内の認可保育所、地域型保育事業のうち小規模保育事業所A・B型、事業所内保育事業所)で働く保育士または保健師、看護師、准看護 師等の保育従事者のうち、採用から5年以内の常勤職員です。

住まいは戸田市内でなくとも対象になります。

 

愛知県

愛知県の中で、家賃補助が手厚い自治体の一つとして名古屋市が挙げられます。名古屋市の家賃補助に関する特徴を以下に紹介いたします。

 

事例:名古屋市

補助基準上限金額は、一戸当たり月額82,000円、補助割合は3/4、残り1/4を事業主が負担するよう定められています。

名古屋市内の保育所等(民間保育所、幼保連携型認定こども園、保育所型認定こども園、幼稚園型認定こども園、小規模保育事業所等地域型保育事業)で働く、親元からの通勤時間がおおむね120分を越える保育士を対象に行っています。

 

大阪府

大阪府内で家賃補助が手厚い自治体の一つとして、大阪市が挙げられます。以下に、大阪市の家賃補助に関する特徴を紹介します。

 

事例:大阪市

市内で働く保育従事者を対象としていますが、家賃上限は、条件により違いがあります。

1.平成28年8月以降に採用された保育士の方
補助上限月額:66,000円(1人あたり)
補助割合:国1/2  大阪市1/2 事業主負担なし

2.上記のうち、現在勤務する保育所等に採用される前の1年間に市内の保育所等での勤務経験がある方
補助上限月額:49,000円(1人当たり)
補助割合:国 1/2 、大阪市 1/4、事業主 1/4

3.市内民間保育所等の採用から起算して7年以内の保育士の方で上記に該当しない方
補助上限月額:49,000円(1人あたり)
補助割合:国1/2 大阪市1/4 事業 1/4
※ただし、令和元年度において本事業の対象であって、令和2年度以降も引き続き同じ宿舎に入居している場合は、1の方は補助上限月額82,000円、2.3の方は補助上限月額61,000円になります。

 

保育士宿舎借り上げ支援事業の注意点

各自治体の保育士宿舎借り上げ支援事業について紹介しましたが、実際に利用する際には以下の注意点を押さえておくことが重要です。

 

【注意点1】今後廃止される可能性がある

この事業は、国の方針により変動する可能性が高いです。毎年の予算決定に依存します。 数年後には廃止される可能性も考えられます。 この記事では、2023年時点での情報を提供していますが、2024年度の継続が未確定です。

 

【注意点2】国や自治体によっては実施していない場合がある

この事業は、国の新子育て安心プラン(待機児童解消を目指す政策)に参加する区市町村が実施しています。そのため、待機児童問題のない自治体ではこの制度が導入されていないことがあります。

 

【注意点3】同一市内に転職した場合は利用できない場合がある

市内で初めて採用された場合に条件が当てはまることが多く、同一自治体内、つまり同じ区内や市町村内での転職は制度の利用が不可としている自治体も存在します。転職を考える際には、自身の属する自治体のルールをよく確認することが重要です。

 

【注意点4】補助金額は所得税の課税対象になる

補助金額は所得税の課税対象になります。これは家賃補助が給与(収入)とみなされるためです。具体的には、国税庁によるガイドラインにより、保育士の負担が賃料相当額の50%以上の場合は課税対象外とされますが、賃料相当額の50%未満の負担または負担金ゼロ円の場合、保育士の給料から家賃補助分の所得税が差し引かれることになります。詳細については、国税庁の正式なガイドラインを確認することが重要です。

 

給与として課税される範囲

1.無償で貸与する場合
→賃貸料相当額が給与として課税対象になります。

2.賃貸料相当額より低い家賃を保育士が負担している場合
→支払っている負担金と賃貸料相当額との差額が、給与として課税対象になります。
※ただし、保育士が負担している家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。

賃貸料相当額とは、家賃額ではなく従業員に貸し出す場合の適切な金額の事であり、複雑な計算で算出されます。例えば賃貸料相当額が1万円の場合、5000円以上の本人負担があれば課税されませんが、3000円の負担であれば、差額の7000円分が給与の所得税対象となります。

参考|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁 (nta.go.jp)

 

保育士が受けられる家賃補助はどれがお得?

保育士が受けられる家賃補助のお得さは、各自治体の制度や保育園によって異なります。一般的に、家賃補助の負担金がゼロ円から1万円以内の場合、制度を利用することがお得と言えます。

例えば、年収が330万円未満の保育士が、年間で7,000円×12か月分で84,000円の補助を受ける場合、年収が330万円を超えて税率が上がる可能性があります。しかし、この補助を受けることで、税金が増えても実質的には家計にとって有利な場合があります。

ただし、保育園によっては、節税対策として保育士の負担を軽減するために、賃貸料相当額の50%以上を徴収する場合もあります。したがって、各自治体や保育園の制度を確認し、自身の状況に合った選択をすることが重要です。

参考|No.2260 所得税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

 

【ケース別】こんな時、保育士の家賃補助は受けられる?

「こんな時は家賃補助が受けられるの?」と疑問に思う事や、知らないと損をするかもしれないことをまとめました。

 

ケース1:結婚・同棲・同居している場合

既婚者でパートナーが住宅手当をもらっている場合は対象となりません。 また、同棲やルームシェアなど友人と同居という場合は認められない事も多いようです。 知らずに同居していると、契約違反となる場合もあるので規約を確認しましょう。

 

ケース2:公立保育園や無認可保育園に採用された場合

保育士宿舎借り上げ支援事業は、もともと保育士の人材確保と離職率の減少を目指す施策として行われています。そのため、倍率が高い、定着率が高い、給与水準の高い公務員保育士は対象外です。また、無認可保育園が対象となるかどうかは自治体により異なります。各自治体の公式ウェブサイトで詳細を確認するか、問い合わせを行うことをおすすめします。

 

ケース3:パート・派遣・契約社員として働く場合

パート・契約社員・非常勤職員の場合、家賃補助の対象は自治体により異なります。ほとんどの自治体では、一般的に『保育所等に勤務する、勤続10年までの常勤保育士。ただし、月〇時間以上保育に従事している事(または、週〇時間以上、1日〇時間以上か月〇日以上)』などと条件を設けており、これらの条件に該当すれば家賃補助を受けることができます。

ただし、自治体によっては、フルタイムであっても臨時・非常勤雇用や契約社員は対象外とする場合もあります。

また、この事業は保育園の直接採用が条件とされているため、派遣社員は一般的には対象外となります。詳細は各自治体の規定を確認してください。

 

家賃補助以外にもある!保育士が受けられる補助制度

保育士や保育士志望の方が受けられる家賃補助以外の補助金や支援制度も存在します。以下はその一部です。

 

1.保育士修学資金貸付

保育士養成施設に通う保育学生が受けられる制度です。

<内容>
修学資金の一部を借りる事ができ、卒業後5年間、貸付を受けた都道府県の施設で保育士として働くことにより返還が免除されます。

<貸付額上限>
学費 月額5万円
入学準備金 20万円(初回に限る)
就職準備金 20万円(最終回に限る)
生活費加算 月額4~5万円程度(生活保護受給世帯及びこれに準ずる経済状況の者に限る)
※貸付期間:最長2年間

 

2.未就学児をもつ保育士の保育所復帰支援

未就学児をもつ保育士が職場復帰をする際に受けられる制度です。

<内容>
未就学の子どもがいる潜在保育士が支払う保育料の一部を貸し付けすることにより、再就職(保育所への復帰)を支援します。貸付を受けた都道府県の施設で保育士として再就職し、2年間働くことにより返還が免除されます。

<貸付額上限>
月額5.4万円の半額
 ※貸付期間:1年間

 

3.潜在保育士の再就職支援

再就職を希望する潜在保育士が受けられる制度です。

<内容>
潜在保育士が再就職する場合の就職準備金を貸付けることにより、潜在保育士を掘り起こし、就職を促進します。貸付を受けた都道府県の施設で保育士として再就職し2年間働くことにより返還が免除されます。

<貸付額上限>
就職準備金 40万円

 

4.未就学児を持つ保育士の子どもの預かり支援

現在保育所等に勤務している、未就学児の子どもを持つ保育士が受けられる制度です。

<内容>
保育所等に勤務する未就学児をもつ保育士が、勤務時間(早朝又は夜間)により、自身の子どもの預け先がない時、ファミリー・サポート・センター事業やベビーシッ ター派遣事業を利用する際の利用料金の一部を支援します。2年間の勤務により返還が免除されます。

<貸付額上限>
事業利用料金の半額
※貸付期間:2年間

これらの制度の実施主体は都道府県・指定都市で補助割合は、国が9/10 都道府県・指定都市が1/10です。
制度を利用するには、各自治体や社会福祉協議会のWebサイトなどをチェックするか、勤務先の保育園に問い合わせるなどして窓口を確認してみましょう。

参考|こども家庭庁r5_yosangaisan_gaiyou_sankou.pdf (cas.go.jp)

 

保育士の家賃補助が受けられる求人を見つけよう!

家賃補助や保育士宿舎借り上げ支援事業は、保育士の方々にとって重要な支援制度です。都心部や大都市圏などでの生活費が高い地域では、これらの制度を活用することで経済的な負担を軽減し、生活の安定を図ることができます。転職や就職を検討する際には、家賃補助が受けられる求人を探すことは非常に有益です。

ただし、制度の内容や対象条件は地域や自治体によって異なるため、詳細な情報は各自治体や保育園などの公式情報源を確認することが重要です。また、制度の変動があることも考慮し、最新の情報を入手することが大切です。

保育士の専門性を高めながら、生活の安定を図るために、家賃補助やその他の支援制度を有効活用することをお勧めします。保育士の大切な役割を果たす皆さんが安心して働ける環境づくりが進むことを願っています。

 

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