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保育業界を後退させる「不適切保育」や「補助金不正受給問題」を払拭する業界からの発信の重要性 「保育士不足解消」が全てのカギとなる2024年

2023/12/11
ニュースリリース

〜明日香、「保育業界に関する2023年総括と2024年展望レポート」を発表〜

 子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ(https://konnect-labo.jp/)」を運営する株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野 吉俗、https://www.g-asuka.co.jp/index.htm)は、「保育業界に関する2023年の総括と2024年の展望レポート」を発表いたしましたので、お知らせいたします。

総括展望

■異次元の少子化により、政府が推進する保育士の「配置基準」に懸念

 女性の社会進出による共働き世帯の増加や、少子化による慢性的な保育士不足により例年待機児童が発生していましたが、令和5年4月時点の待機児童数は、2680人(前年比264人減 ※1)と子ども家庭庁の発表がありました。いよいよ体勢は逆転し、”空きのある保育施設”が増加しています。もちろん、この状況が悪化すれば経営難に陥る事業者も現れ、撤退を余儀なくされる危険もあります。

 そこで政府は「異次元の少子化対策」の一環として、76年ぶりに保育士の配置基準見直しを示しています(※2)。配置基準が改善されると、保育士一人当たりが対応できる子どもの数が減ることになり、保育の質が向上するとともに子ども達への目配りやケアがより細やかに行われ、安全性が更に増すことが期待できます。また、保育士一人ひとりの業務負担も軽減でき、人材確保に好影響を与えるでしょう。この施策が大きな一歩であることは間違いありません。

 しかしながら、長年続いている保育人材の不足状況は一向に解消されていません。そういった中で、”増員を伴う質向上”を保育現場に求めても、その実現性に疑問を感じます。将来的な保育の成り手である、特定保育士養成施設の学生数も少子化の影響を受けて減少する中、ますます保育士という職業の魅力や価値を高めなければ、保育の成り手が増えないどころか、敬遠される職業となり、最終的には施設を利用する子どもたちが不利益を被る可能性もあります。それを防ぐためにも、配置基準見直しと並行して、抜本的な保育士の処遇改善を早急に進めることを国に期待しています。

 さらに、2023年の保育業界のトピックとして、政府は、教育・保育施設等やこどもが活動する場等において働く際に、性犯罪歴等についての証明を求める仕組み「日本版DBS」を推進していましたが、条例違反や示談による不起訴の例が対象外になるなど、多くの課題を残すこととなり法案提出が見送りとなりました。しかしこの間にも、保育者による性犯罪事件が実際に起きています。政治的都合や対策の遅れにより、子どもたちを守れないというのは、常にこどもの利益を第一に考えるという「こどもまんなか社会」の意義に反します。限定的な実施も含め、早急な対応が求められます。

 ただ、この法案には、保育者側の個人情報に関わる大きな課題があるのも事実です。犯歴が該当する要配慮個人情報の在り方や、雇う側である施設や事業者がこういった情報を適性に扱うための整備も求められます。しかし、万が一管理する側に負荷がかかり、犯歴の有無に関わらず雇用者の個人情報が漏洩のリスクに晒されるようなことがあれば、保育人材不足をさらに助長することにも繋がりかねません。

 子どもを犯罪から守る環境を早急に築くために、関係各所の強い協力体制が今求められています。

 

■「不適切保育」や「補助金不正受給問題」が保育業界を後退させる

 2023年には、不適切保育のニュース(※3)も相次いで発生しました。保育園は子どもにとって安心安全な場所でなければならないにもかかわらず、保育士の行き過ぎた指導が話題となった1年でした。「うちの保育園は大丈夫だろうか...」と不安を募らせた保護者も多いのではないでしょうか。

 不適切保育が起こってしまう要因は様々考えられますが、やはり保育士の人材不足はその一つとして挙げられます。慢性的な保育士不足は1人にかかる仕事量が増え負担となります。また、それにより職員間のコミュニケーションが希薄になることで、自身の保育や言動を振り返るきっかけを無くしてしまいます。子どもの最善の利益を追求すべき保育が、いつしか”保育士都合”の保育を行わないと園内活動が予定通りに進行しない。また、保護者の多様な期待や要望にも応えたい。そういった状況に焦りを感じ、子どもたちの人権や主体性を無視した言動を行ってしまう状況が考えられます。

 虐待や不適切保育は断じて許されるものではありません。保育者の倫理観も問われます。しかし、保育現場に潜在する問題に目を向けずに保育者に対する批判を無差別的に強めれば、結果としてさらに子どもたちに不利益が生じる可能性もあります。取り巻く環境も含め、多角的にこの問題を捉えなければいけません。

 保育業界を後退させている要因として、保育事業者による「補助金不正受給」の問題(※4)もあります。存在しない保育士が該当施設に在籍しているかのように行政に申請し、補助金を不正に得るという問題です。保育事業者や施設は、国や各自治体の定める配置基準に基づき職員を配置し、在籍園児数や職員の状況に応じて運営費が支払われます。しかし、待機児童解消に向け施設が激増した中、保育士不足がさらに深刻さを増し、人材確保が非常に困難な状況に業界全体が陥りました。

 その影響を受けるように配置基準を守ることが難しくなり、虚偽報告によって行政からの指摘を免れ、さらに補助金を得ようとする事業者が現れたカラクリです。要するに、社会的背景を口実にした事業者側のコンプライアンス意識の低さが問われることになったわけですが、不正が発覚するまでの間、現場は人手不足に晒され、ぎりぎりの保育の中で過ごしている子どもたちにリスクが生じていた事態となりました。

 しかし、当然ながらすべての保育事業者がこういった行為をしているわけではありません。メディアの特性もあり、このような一部事業者のネガティブニュースによって保育業界全体に対して不信感が増しているのが実状ではないでしょうか。

 

■背景には「保育士不足」。政府の対応と保育業界からの発信がカギ

 一方で、素晴らしい保育を行う保育士が在籍し、子どもたちがいきいきと過ごしている保育施設が全国に数多く存在します。ネガティブなニュースと比較して、このことが世の中に知られる機会が圧倒的に少ないのも事実です。コロナ禍においてはエッセンシャルワーカーとして社会的にその存在価値が高まり、2019年滋賀県で起きた事故の際には、SNS上で保育士を励ますようなアクションも起こされました。(※5)

SNS

 2023年は、相次いだ不適切保育問題や事業者の不正問題、さらには保育者による性犯罪事件等、許しがたいニュースが際立つ年となってしまいました。こういった負の側面に対しては、引き続き厳格な姿勢で臨み、改善と向上を図っていかなければいけません。しかしそれと同時に、今一度、保育施設や保育士の存在意義、そしてその実態を業界側から社会に向けて発信し、世の中の関心をいっそう深めながら周囲からの理解や支援を得て、保育の質向上に繋げていくことが、2024年は求められるでしょう。集中取組期間中にいかにその効果が発揮されるか。政府の「こども未来戦略」の具体性にも注目です。

 

※1|内閣府子ども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和5年4月1日)及び「新子育て安心プラン」集計結果を公表」

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f699fe5b-bf3d-46b1-8028-c5f450718d1a/8e86768c/20230901_policies_hoiku_torimatome_r5_01.pdf

 

※2|厚生労働省|児童福祉施設最低基準

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1006-7e_0005.pdf

 

※3|給食に2時間、吐くまで食べさせる 名古屋市が保育園に改善勧告https://www.asahi.com/articles/ASRBR6H8XRBROIPE00S.html

※4|初めての「お詫び」が発覚から8か月…でも「故意ではない」 保育園運営のコスモズ、補助金の不正受給で

https://www.tokyo-np.co.jp/article/277421

 

※5|「保育士さんありがとう!」Twitterで励ましや感謝のツイートが広がり話題に!

https://www.g-asuka.co.jp/job-info/column/hoikushiarigatou.html