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<保育業界に関する2022年総括と2023年展望> 急速に進む少子化と影響受ける保育業界 「選ばれる保育園」づくりという施設間競争が進んだ1年に

2022/12/21
ニュースリリース

〜2023年は、施設・事業者同士や自治体との共創による保育の質向上がカギ〜

 

子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ(https://konnect-labo.jp/)」を運営する株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野 吉俗、https://www.g-asuka.co.jp/index.htm)は、「2022年の総括と2023年の展望」について発表いたしましたので、お知らせいたします。

総括展望

■政府は子どものヒヤリ・ハット事例の実態調査に乗り出す方針を発表

コロナ禍をきっかけに一般企業がリモートワークを推奨した流れの中で、保育施設の監査に関しても、リモートや書類のみの監査に置き換わる方向に進んでいます。しかし、有識者の間では、安全管理の面で懸念の声が上がっていました。そのような状況の中で相次いで発生してしまった、バスでの児童置き去り死亡事故。保育施設の利用者は、より一層不安を募らせています。

政府は、子どものヒヤリ・ハット事例の実態調査に初めて乗り出すという方針を11/27に発表しました。事故に至らなかった事象の履歴を残し、安全管理に繋げる目的がありますが、この実態調査を実施するということは、チェック体制がより強まることも意味しています。つまり、保育士への目線が、より厳しくなるということです。子どもの命が脅かされることに対しては早急に対応が必要であり、最優先事項であるのはもちろんですが、保育士の処遇が十分に改善されない中で、このような動きだけが強まると、人材不足という大きな課題解消が遠のいてしまい、当然ながら保育の質の低下にも直結してしまいます。

 

■強まる保育士への風当たり、求められる処遇改善

少子化の加速により空きのある保育施設が増加し、保育施設の経営としては利用者獲得に焦点が当てられています。しかし、保育対象の子どもが1人であろうが10人であろうが、現場の保育士は、自身がコロナ感染になるリスクを背負いながらも全力で保育に臨んでいる人が圧倒的多数です。利用者の数が減ったからと言って、少ない労力で足りるということではないということです。このような状況を踏まえても、段階的にではなく急進的に処遇改善をしない限り、状況は打開できないでしょう。処遇改善に関して、政府には包括的な対策を期待しつつ、併せて運営事業者側も賃金を設定する上での対策が必要だと考えています。

保育士の賃金については、国から支払われる「公定価格」がベースとなっています。また、公定価格で換算される人件費は、国が定める保育士の配置基準によって決定します。配置基準については、実際の保育現場との乖離について昨今議論が強まっていますが、この公定価格や配置基準が上昇もしくは改善されない限り、事業者側が処遇改善に踏み切れないというのも課題の一つです。保育士に対する分配の仕方に関しては、事業者がモラルを問われる部分もありますが、その部分を差し引いたとしても、原資となっている公定価格や補助金の仕組みを改善していくことが、処遇改善の第一歩です。

 

■物価高や円安の波は、保育士・利用者・質の偏在に繋がる

2022年の物価高・円安の波は、保育業界にも影響を及ぼしています。様々な自治体が補助金などで対応してはいますが、保育士の賃金引き上げが不十分な状態である限り、給与の高い保育施設に保育士が偏る可能性も出てきますし、それによって保育の質にも、園を選ぶ利用者にも偏在が生まれます。中には、これ以上予算の確保が難しいという自治体もあるでしょうから、既に偏在が起きているかもしれません。

実際に、保育士107名を対象に実施したアンケート(※)でも、55.1%の保育士が「円安や物価高騰による保育の質への影響」を実感しており、「教材や・制作物素材の買い控え」などにおいて影響を感じているようです。

Q1

Q2


なお、同調査内では、円安や物価高騰により「保育士自身の生活」も困窮しているという悲痛な声も多数挙がっており、保育士としての仕事の継続に対する不安も浮き彫りとなりました。

 

※調査概要:物価高騰・円安に伴う保育への影響に関する実態調査

調査方法:インターネット調査

調査期間:2022年12月5日〜同年12月9日

有効回答:保育士107名

調査機関:子ねくとラボ(株式会社明日香)

 

■歯止めが効かない少子化は、ポジティブな競争で乗り越える

11/28の会見にて、松野博一官房長官は、過去最少ペースの出生数に対して「危機的状況」とコメントしましたが、少子化は長らくの問題になっており、改善の兆しが見えません。2022年の動きとして重要なのは、2022年4月1日時点の保育所利用児童数が、初めて前年比を下回ったというニュースです。保育施設の定員と利用者数の差が広がっており、定員充足率は、ついに80%台に突入しました。

保育業界にとって、これは「自施設が選ばれなければ、運営ができない」状況であり、競争が激しくなったと言えます。ただ、嘆いていても前に進めません。「この状況によって保育業界で競争が生まれるかもしれない」と、ポジティブに捉えることが大切です。保育施設というのは社会の基盤になるものなので、政府のサポートは不可欠ではありますが、ポジティブな競争により、その中から新たな価値やアイデアが生まれ、業界全体で乗り越えていくことを期待しています。

事業者間の統廃合も活発化することが予想されます。交渉は不成立に終わったようですが、2022年の初めには、上場企業同士の統合に関する話題が挙がり業界の注目が集まりました。賛否両論はあるものの、こういった活動によってアイデアを生み、新しい価値を創造できれば、多様性の実現にも繋がるはずです。

ただし、ポジティブな競争が良い起爆剤になるためには、あくまでも政府の適切なサポートが基盤にあることが前提です。政府と事業者が連携して、この状況を乗り越えていかなければなりません。

 

■2023年は事業者同士の情報共有、そして、自治体との共創がカギ

2023年は、今後のコロナ感染がどう動くかに注目すると同時に、引き続き少子化と利用者減少にどう向き合うかということが、焦点となります。2022年は、児童置き去り死亡事故という痛ましい事故が起きてしまい、これからの運営の在り方に変化が求められています。これらの事故は、人材確保や業務効率化を目的としてデジタル化が図られたものの、人的エラーが発生したことが要因でした。保育業界においても、デジタル化の推進は重要な意味を持っています。デジタル化を進める上で、人的エラーが発生しないための改善策を政府には期待しています。

文科省では、「幼保小架け橋プログラム」の開発・推進に向け、官民問わず様々な機関との連携強化が進められています。また、各自治体においても、官民共創をテーマに民間事業者の事業ノウハウを活用する動きも活発化しています。喫緊の課題解決に向けては、事業者間のみでの取り組みではなく、行政・自治体と民間事業者との”実質的な共創”が大切だと考えています。

 

■「子ねくとラボ」について

子ねくとラボ

 「子ねくとラボ」は、「子ども+Nursery(保育)+Education(教育)・Entertainment(エンターテインメント)+Creation(創造)+Trend(トレンド)」の要素から構成された、子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクトです。子育てや保育に関する「調査レポート」や「ニュース/記事」、また「子ねくとラボ」が提供しているサービスについて発信しております。

事業名   :子ねくとラボ

事業責任者 :末廣 剛

URL   :https://konnect-labo.jp/

サービス内容:・選ばれる園づくりコンサルティングサービス

       ・保育施設向け研修&巡回サービス

       ・保育専門実証実験 コーディネートサービス

       ・スタートアップ支援サービス