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2022年は「幼児教育スタートプラン」の実現、 少子化の流れ受け保育事業者のアピール力がカギ 〜保育業界に関する「2021年の総括および2022年の展望レポート」を発表〜

2021/12/15
ニュースリリース

株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野 吉俗、以下 明日香)が運営する子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ」は、保育業界に関する「2021年の総括および2022年の展望レポート」を発表いたしました。

 

■定員充足率や有効求人倍率の変化により、保育事業は新たな局面に

2021年は、少子化や待機児童が減ってきている事などから、定員充足率が下がってきており、保育事業者にとってはどう利用者を確保するかが課題となりました。併せて、保育士の有効求人倍率低下の傾向も現れ、求職者側にとって優位だったこれまでの状況に変化が起き始めています。保育士側は保育スキル以外にも、園の魅力に繋がる働きが期待され、今後は保育士ひとりひとりのアピール力も注目されるでしょう。

 

保育事業の発展を阻害する保守的で古い体質は見直され、新しいことへのチャレンジや施設の魅力を効果的に伝えることが大きな課題です。令和7年に利用者数がピークを迎えるというニュースを目の前に、経営主体の形態を問わず全ての事業者にとって、付加価値を生み出し内部強化と外部発信を総合的に取り組むことが、今後の持続可能性と生き残りに大きく影響していくでしょう。

 

■定員充足率の状況が保育所にも働き手にも変化を及ぼしている

保育所側に関しての意識で言うと、「子どもが少ない」、「定員数が減らされた」といった報告も挙がっていることから、どこも危機感は感じているものの、それを乗り越える手がかりが少ないことも事実です。

 

その中で、保育所・幼稚園においては、両方の特徴を併せ持った「こども園」化の議論も一部で加速しています。

 

それぞれの園に子どもを預けるには、保護者の認定区分(第1号、第2号、第3号)が関係しており、1号認定は満3歳以上で保育の必要性がない子どもたち、2号認定は親が働いていて保育が必要な満3歳以上の子どもたち、3号認定は親が働いていて保育が必要な0,1,2歳の子どもたちのことを言います。この区分に従い、保育所は2号認定3号認定の子どもたちに限って受け入れを行っているわけですが、現在、その利用充足率が下がってきている状態です。そのため、保育所はこのような枠を撤廃し、認定こども園と同様に全ての認定区分の子どもたちを受け入れることができれば、充足率の課題が解決に向かうのではないかという考えです。

 

さらに、認定こども園で働くためには、保育教諭として保育士と幼稚園教諭の両方の資格を持つ必要があります。そのため、国は予算を割いて資格取得を促してはいましたが、順調には進んでおらず、特例措置により2024年度末まで期間を延長して引き続き取り組んでいる現状です。

 

保育所側が定員充足率を上げるために1号認定の子どもたちも受け入れられるようにしたいという意向があれば、働く側もそれにあわせて資格を取る必要が発生し、それに伴うノウハウやスキルも身に着けなければなりません。つまり、定員充足率の状況は、人事や雇用の面にも影響していくと言えるわけです。

 

■空きのある保育施設と、孤立させない育児のための活用

定員充足率で悲鳴を上げているのは主に地方です。2021年11月24日に厚生労働省の「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会」から政府への提言もありましたが、内閣府においても、空きのある保育施設の活用については議論が続けられています。そこには子育ての孤立化を無くすことが一つの目的として存在しますが、特に子どもへの虐待を防ぐことが期待されています。育児の孤立を減らし、子どもたちを見守る「目」を増やすことで社会全体で育てていく仕組みを築く意図がそこにあります。

 

ただ、保育現場の実情はどうでしょうか。その園に慣れていない子どもを一時的に預かることは、普段から通園している子どもたちとは異なる配慮や関わり方が求められ、決して簡単なことではありません。社会的使命としてニーズに応えたい想いに反して、深刻な保育士不足の中で受け入れ体制が不十分であれば、たちまち負担となり労働環境の悪化も招いてしまいます。

 

保育施設の空きスペースを活用し子育て支援を充実させるには、保育士確保に向けた待遇改善も更に加速させる必要があります。

 

■民間の新規参入と事業規模拡大の難しさ

民間では新規園開設による事業規模拡大を引き続き進めているところもありますが、少子化の影響による利用者数減少に伴い、大手事業者を中心に新規開設を控える傾向が見られます。オーガニック成長が見込みにくい中、他社資源の活用により自社をスピーディに成長させるためのM&Aに注目が集まっています。そのため、他業界から保育業界への参入もあるわけですが、いかなる事業者であれ保育・子育て支援への理解は常に深くあるべきです。公立園の民営化事例も増え、民間事業者の活躍が業界の活性化には不可欠な一方、保育がいわゆるマネーゲームに巻き込まれないよう、行政や自治体の管理体制も、今後より一層整備が求められるでしょう。

 

■自治体にとってもアピールが課題

2021年は、全般的に「SDGs」という一つのキーワードが、子育て支援事業の中でも広がりを見せました。特に自治体による「切れ目のない子育て支援」は大きなテーマとして動き出しており、妊娠・出産期から子育て期まで、地域一体となった子育て支援の充実化が図られています。これは、様々な自治体において、各地域版のネウボラ(フィンランドの出産・育児支援施設)と銘打って展開されておりますが、支援センター等の施設利用者数が伸びない課題も抱えており、これは一つにアピール方法も含め、必要な人に必要な情報が届けられていないという背景も考えられます。現代社会における子育て支援の充実化には、こういった自治体サービスのPRをいかに上手く行えるかが重要であり、民間のスキルやノウハウを積極的に活用することで実現も加速されるでしょう。

 

<6割強の保育園が、「SGDs」に関係する取り組みを実施>

(参照|​「保育の現場におけるSDGsへの取り組み」に関する実態調査​

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000043389.html

 

■オンラインの新しい使い方と新たな挑戦が今後を分ける

今年度は、明日香もオンライン保育実習を実施する中で、オンラインならではの特徴やメリットを実感しました。例えば、今回オンライン保育実習に参加された学生達は、現場実習ではじっくり聞けない保育士からの詳しい解説や各保育士の普段の動きを俯瞰的に見ることができたなど、これまでと違う観点で知識を広げることができています。

 

コロナ禍があったからこそ実現した動きですが、オンラインに可能性を感じている保育事業者も少なくありません。「保育実習は現場で行うことが当然」という絶対的信念も理解しますが、それができない現実に直面した時に、「新しいことをやってみよう」と挑戦できるかどうか、その一歩が踏み出せたかどうかが、保育事業者の今後の分かれ目と言えます。

 

今後は、リアルで出来ない”穴”をオンラインで埋めるのではなく、リアルの質や生産性、魅力を向上させるためにオンラインが活用されていくべきだと考えています。文科省の「幼保小架け橋プラグラム」の推進が一つのきっかけになることを期待しています。

 

■2022年は保育、保育業界のあり方が見直される年に

2022年、保育業界のポイントは、定員充足率だけでなく、文科省が進める幼児教育スタートプランが一つの鍵となりそうです。ICT促進やデータ収集・分析もきっかけとなり、保育そのものの考え方や、利用者側の保育、そして、保育施設に対する捉え方がどう変わっていくのかにも注目していきたいと思っています。

 

どうすれば利用者や保育者を確保できるかという課題に向き合っている保育現場は、試行錯誤を繰り返しながらチャレンジを行っていくでしょうし、その活動に注目も集まるでしょう。人が集まらない現実があるからこそ、保育の見直しや自分達の強みを打ち出すなどのムーブメントも起こり、保育や保育所の再定義に対する議論も活発に成される年になるかもしれません。