保育のコラム

保育士は産休や育休は取れるの?保育士が知っておくべき産休・育休の基礎知識

2020/12/01

育休・産休の取りやすい求人を探す

働く女性にとって、産休・育休を取れるかどうかは大切な問題です。

この問題は女性の多い保育士業界も例外ではありません。

普段は子どもを預かる仕事をしている保育士ですが、自分たちがいざ妊娠や出産をする際、産休・育休をきちんと取得することはできるのでしょうか?

今回は、保育士の産休・育休について、実情や復帰時期について解説していきます。

“ずっと保育士編集部”

【記事監修】ずっと保育士編集部

「ずっと保育士」は、保育ひとすじ28年の株式会社明日香が運営する保育専門のキャリアサポートサービスです。結婚や出産、育児など、目まぐるしく変わるライフステージの中で、その時その時にぴったり合うお仕事を紹介したい。そして、保育の仕事でずっと輝き続けるあなたを応援したい、という想いで保育士の就職、転職、復職などのキャリア支援を行っています。また、「ずっと保育士」では保育士さんの疑問や悩みなどを少しでも解決すべくコラムを通した情報発信も積極的に行っています。

そもそも産休・育休ってどんな制度なの?

『産休』は産前産後休業の略で、「産前休暇」「産後休暇」を合わせたものを言います。

「産前休暇」とは出産予定日の6週間前(双子等多胎児妊娠の場合は14週間前)から出産までの間に取れる休暇の事で、事前に職場に申請することによって取得可能です。

「産後休暇」とは出産から産後8週間までに取れる休暇のことです。

産前休暇は本人の希望に応じて「取得しない」という選択も可能ですが、産後休暇は法律によって働くことを禁じられています。

ただし、本人の働きたいという希望があり、産後の経過に問題がみられない場合には最短で産後6週間後から職場復帰することも可能です。

ただし、この場合には医師に「働いても良い」という診断書を発行してもらう必要があります。

一方で、『育休』は育児休業のことです。

原則的に子どもが生まれてから1歳の誕生日を迎えるまでの期間、仕事を休み、育児に専念できる制度となっています。

育児休業は条件を満たしていれば取得可能で、男性女性にかかわらず取得可能です。

産休や育休が取れない場合とは?

産休は、妊娠している女性全てが「取らなければならい」と法律で定められており、妊娠している女性に産休を取得させることは義務となっています。

そのため、妊娠や出産を理由に女性を解雇する事はできませんし、解雇をにおわす言動は違法になります。

一方で、育休を取得できるかどうかについては次のような条件を満足する必要があります。

正社員の場合

  • 同一事業主で1年以上働いている
  • 1週間に3日以上勤務している

期間雇用(契約社員・パート・派遣社員など)の場合

  • 同一事業主で1年以上働いている(日々雇用される者を除く)
  • 1週間に3日以上勤務している
  • 子どもが1歳6ヶ月になるまでに契約期間が満了することが明らかでない
  • 契約が更新される場合は、更新後の契約期間が子どもが1歳6ヶ月になるまでに満了することが明らかでない

保育士は産休・育休を取得可能なのか?

先ほどもご紹介した通り、産休は法律で「働いてはいけない」と定められているため、原則は誰でも、どんな職業であっても取得可能です。

それは保育士として働く女性も例外ではありません。

しかし、実際に産休を取得できるかどうかは職場の雰囲気や仕事内容にもよるというのが現状のようです。

内閣府の発表している「『第1子出産前後の女性の継続就業率』の動向関連データ集」によれば、第1子出産前後に退職する女性は全体の46.9%となっています。

この結果から、産休を取得することが職場の雰囲気や仕事内容的に難しく、やむなく退職せざるを得ない状況になってしまったという実情が推測できます。

特に保育士不足が叫ばれる今、人手不足の保育園などでは産休が職場の雰囲気や仕事内容的に取りづらかったり、産休が取得できたとしても、保育士の仕事と育児の両立が体力的に難しいと感じ、出産を機に退職してしまう方が多いようです。

一方で「育休」についてはどうでしょうか。

厚生労働省によって発表された「令和4年度雇用均等基本調査」の結果概要によると、日本全体での育休取得率は女性で85.1%の割合を占めています。

保育士の育休取得も例外ではなく、取得可能な環境や制度は整ってきていると言えます。

しかし、実際には産休と同様に、取得しやすいかどうかは園の雰囲気や仕事内容にもよるというのが現状です。

また、保育士自身が育児をしながら、他の子どもの面倒を見るという仕事スタイルに寂しさを感じたり、小さいうちは子どもの側にいてあげたい理由で育休を取得せずに退職するケースもあるようです。

職場の雰囲気や仕事内容だけではなく、雇用形態によっても、育休の取りやすさなどは変わってきます。

次に各雇用形態における育休のとりやすさについて、詳しく見ていきましょう。

正規雇用(正職員)の場合

正規雇用(正職員)の場合、育休の取りやすさは公立保育園に勤めているか、私立保育園に勤めているかによって変わってきます。

公立保育園に努める保育士は地方公務員です。

そのため市役所などで働く地方公務員と同じ制度が適用されます。

公務員の産休・育休制度は非常によく整っており、取りやすい職場環境が整っています。

一方で、私立保育園に勤める保育士の場合には、勤める保育園によって取りやすさが変わってきます。

保育士不足が叫ばれる昨今、育休や産休を取得を歓迎する保育園が多くなってきているため、今後より保育士の育休・産休取得はしやすくなることが予想されます。

非正規雇用(パート・アルバイト・契約職員・臨時職員)の場合

パート、アルバイトの場合でも産休や育休の取得が認められています。

しかし、正規雇用者に比べ、資金や人員にあまり余裕のない保育園は、非正規雇用の保育士に育休を出し渋ることも報告されているようです。

派遣保育士の場合

派遣保育士の場合も、法令に基づき育休を取得することが可能です。

保育園の都合や実情はあるものの、派遣保育士を雇用しているのは保育園ではなく「人材派遣会社」です。

厚生労働省の認可事業でもある人材派遣会社は法令遵守が義務付けられています。

仮に不当な扱いを受けた場合でも、仲介し問題を解決することはもちろん、育休後は保育園を変更し別の保育園への派遣も可能です。

保育士が不足している現状、保育士のニーズは高く、育休後にも働きたい意欲があれば、派遣会社は雇用を正当に守ってくれます。

「1つの保育園で働き続けたい」と思っていなければ、実は派遣保育士は女性にとって非常に働きやすい雇用形態と言えるのです。

産休、育休中にお給料はどれくらいもらえるの?

産休や育休中にも、100%ではありませんがお給料がでます。

お給料といっても、保育園からもらえる訳ではなく国から支給される手当です。

産休中にもらえるのが「出産手当金」と「出産育児一時金」、育休中にもらえるのが「育児休業給付金」です。

税金、社会保険料はかかる?

産休・育休中は保育園からではなく国から「給付」という形でお金を受け取ります。

そのため「無給」となり基本的に税金は発生しませんが、保育園から給料の一部が支給される場合にはその分税金が発生します。

また、前年の収入にかかる税金は支払う必要があるので、育休や産休取得中も前年度の税金を納める必要があります。

給料が一部でも支給される場合には天引きされる事が多いようですが、無給の場合には役所から個人に直接納付書が送られてくるようになるので、金融機関やコンビニなどで直接支払う必要があります。

また、産休・育休中には、厚生年金保険と健康保険といった社会保険料の納付が免除されます。

この免除によって受取年金額が減額されることはありませんし、免除期間中の被保険者資格が変更されることもありません。

ただし、社会保険料の納付を免除するためには自分で申請をしなければなりません。

自動で免除になることはありませんので、産休や育休を取得する際には申請を忘れずにしておきましょう。

最後に、雇用保険料については、給料天引きのため、原則として無給であれば支払う必要はありませんが、会社から給与という形で支払いがある場合は、そこから雇用保険料が天引きされることになります。

いくらぐらいもらえるの?もらえる期間は?

「出産手当金」は、出産日の42日前から出産日の56日後までの間、欠勤1日につき賃金の3分の2に相当する金額が支給されます。

産後56日以降に会社の総務部などの担当部署、または社会保険事務所に提出し、申請後1~4ヶ月後くらいに受け取りとなります。

「育児休業給付金」は育育休に入ってから最初の180日分は、月給の67%、その後は50%が支給されます。

また、育休前の賃金月額は45万6300円が上限のため、育休前の月給がこれ以上の金額の場合でも、45万6300円の67%もしくは50%までしか受け取ることができません。

なお、育休前の賃金が月額7万7220円を下回る場合は、賃金がいくらであっても7万7220円が給付額となります。

「育児休業給付金」は、原則として職場復帰するまで、もしくは子どもが満1歳の誕生日を迎えるまで受給できます。

しかし父親と母親でずらして育休を取る「パパ・ママ育休プラス」という制度を利用した場合、子どもが1歳2ヶ月まで受給期間を延長することができます。

また、子どもが1歳の時点で以下いずれかに当てはまる場合は、受給期間を1歳6ヶ月、または2歳までに延長することもできます。

  • 保育所への入園を希望しているのに入園できない場合
  • 配偶者が死亡した場合
  • 離婚などの事情で配偶者と同居しないことになった場合
  • 病気やケガなどで養育困難になった場合
  • 6週間以内に出産予定がある場合、または産後8週間を経過しない場合

産休・育休中にお給料をもらうための受給手続きの方法

「出産手当金」、「育児休業給付金」の受給手続きに関しては、基本的に保育園側の担当者が代行してくれるのが一般的です。

勤務先の担当者に申請について確認しておきましょう。

申請書自体は自分で書かなければいけないので、育児休業給付受給資格確認票や育児休業給付金支給申請書などの必要書類を事前にもらっておくのが良いでしょう。

また、受給が始まると2ヶ月ごとに追加申請が必要となります。

勤務先が自動的にやってくれる場合もありますが、個人で申請するように言われる場合もあります。

申請忘れにはくれぐれも注意してください。

復職はいつから可能?

保育士の産休・育休からの復帰の時期は、最短で産休終了直後(産後8週間後、ただし状況によっては6週間で切り上げることも可能)、最長で育休終了後(子どもの1歳の誕生日まで、ただし保育園への入園ができない場合などは延長も可能)です。

基本的にはこの期間内のどこかで復職することになります。

復帰をする時期については、産休前に職場とよく相談し、どのように復帰・就業するのかしっかりと認識を合わせておくことが大切です。

復職前と全く同じフルタイム勤務にするのか、育児のことを考えて短時間勤務にするのか、すり合わせて決める必要があります。

復帰する際の人員や就業規則などもあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。

保育士にとって産休育休制度が整っているかは非常に大切

今現在、保育士の9割以上が女性です。

「ずっと同じ保育園で仕事をし続けたい」と考えている女性は、特に産休育休制度が整っている保育園を選ぶ必要があります。

前にもご紹介した通り、産休や育休は女性の権利であり、法律で守られた制度のため、本来誰でも取得できるものです。

しかし、実情はそうとも限りません。

「妊娠輪番制」などとも揶揄される、保育士同士のトラブルがニュースを賑わせたこともあるように、保育園や保育士同士の中で、産休や育休があっても使いづらい、使ってはならないような雰囲気が漂う園もあるのも事実です。

一方で、育休復帰100%をアピールする保育園もどんどん増えています。

時代の流れとともに、保育士も産休育休を活用し働き続けて欲しい、と保育園も制度を使いやすいものにしようと努力している姿も目立つようになってきました。

女性が働き続ける上で、妊娠や出産といったライフイベントは外して考えることができません。

仮に出産をせず、制度を使うことがなかったとしても、女性にとってのライフイベントを重視し、制度を生かしている保育園で働くことは、他の働きやすさにも配慮が行き届いている可能性が高いと言えます。

そのため、保育園を選ぶ際のポイントとして、「産休育休が取得可能な環境かどうか」を加えて見ることは大切なことです。

 

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