保育士 / 幼稚園 / ベビーシッターの求人・派遣などの総合保育サービス【明日香】
Tel.03-6912-0015
Tel.045-316-5515
Tel.052-232-7715
Tel.06-6155-7755
「保育」のお役立ちコラム

ケース会議の必要性 (5月)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ケース会議の必要性


 慣らし保育も終わり、母親と別れ不安で一杯だった子ども達の顔にも少しずつ笑顔が見られるようになりました。こうして環境の変化に戸惑いながらも、けなげに頑張ろうとしている子ども達の笑顔に助けられながらの一年が始まりました。


 3月は、どこの保育所も卒園する子ども達が通うそれぞれの小学校に保育要録を送らなければなりません。平成21年度からは、「保育要録」の送付が、保育所の重要な役割として位置づけられることになりました。引き継ぎ資料として一人ひとりの子どもが育ってきた課程を振り返り、その姿や発達の状況をとらえ的確に記録することが必要になります。


 
 そのためには子どもの持っている力がどのようなものであるのかを見極めることが必要になりますが、日頃から私達保育士は発達的な観点から子どもの姿を捉えることができているでしょうか。
保育園の日々の生活の中ではちょっと気になる子、付き合いづらいと感じる子が必ずと言って良いほどいるものです。そう思っていてもなかなか手立てがないままに一日が流されてしまうことがよくあります。


 
 そんな中、3月も押し迫ったある日、A君についての2回目のケ-ス会議が行われました。A君の1回目のケース会議は2歳児クラスから3歳児クラスへ進級する時に開かれました。一年が経過した今、1回目の資料と2回目の資料を見比べますとA君のできるようになったこと、1年経っても変わらないことがよく見えてきました。その資料の中から少しA君の様子を紹介します。


【3歳3か月のA君の様子】

(基本的習慣)
□排泄は立ってすることができるが、ズボンやパンツはその場に脱いでトイレに行く
□大便は処理が難しい
□食事は偏食があるものの白ご飯は大好き
□スプ-ンは逆手に持つ
□着替えはほぼ自分でできるが、上着を脱ぐ時は介助が必要
□朝や帰りの身支度では、所定の場所に連絡帳やタオルを置いたり取りに行ったりすることができる
□じっと座っておれず、すぐに離席してしまう


(身体機能)
□三輪車をこいだりキックボードに乗ることを楽しむ


(認知、認識)
□毎日繰り返していることについては「○○を持ってきて」の指示に持ってくることができる


(言語、コミュニケ-ション)
□自分のしたいことをことばで要求する
□困ったことや手伝って欲しいことをことばにする


(対人関係、社会性)
□遊びはひとりあそびであり友達の介入を嫌がる
□突然友達を叩いたりひっかいたりする
□興味のある車の絵本は大人の働きかけを受け入れ共有して楽しむ


【4歳4か月のA君の様子】
(基本的習慣)
□排泄は立ってすることができ、ズボンやパンツを全部下げてお尻を出してする
□大便はズボンやパンツを全部脱いでする
□一人で処理はできない
□食事は苦手な物も一口は食べようとする
□食べこぼしが多い
□スプーンは順手で持つ
□着替えは衣類の前後を確かめて着脱する
□脱いだ衣類の表裏を直したたむことができる
□あそびが切れず時間になっても遊ぼうとする
□片づけを促されると、周囲の友達に砂をかけたり玩具を投げたりする


(身体機能)
□全速力で三輪車をこいで楽しむ
□見ていることが多かったマット運動、ゴム跳び、縄跳びなどにも挑戦しようとする


(認知、認識)
□みんなが良い気持ちになるには人の気持ちを考えること、ゴメンができると気持ちもすっきりすること、ゴメンができたら許してあげることなどが少しずつ分かるようになる


(言語、コミュニケ-ション)
□指示されたことを理解し、他クラスに行って指示された物を借りて来ることができる
□経験したことを思いだし、後日担当に話したりする


(対人関係、社会性)
□クラス全体がうるさく指示が聞こえないような時に「静かにしないと聞こえないよ」と全体に声を掛けたりすることができる反面、話しを最後まで聞かず話し出す
□飽きて来ると友達にちょっかいを掛ける
□何でも一番でなければ気が済まない
□好きな遊びの中では「入れて」と言われると「いいよ」が言えるようになり、2~3名ぐらいの友達とは一緒に遊ぶことができる


一年を終えてのA君の変化
 A君は、大便の処理ができなかったりスプ-ンを持っても上手に使えていなかったりと運動発達、手指の発達に支援が必要であった子どもであることにケース会議を通して気付かされました。
にも関わらず私たちは、どうしても行動問題とされる対人面での関係の取りにくさにだけ目が向いてしまっていました。排便の始末はお尻に手を届かせひねる力が必要になります。まして目に見えないところでの操作をしなければならないため、真似をして覚えることが難しいA君には、付き添って肛門の位置を手を添えて教えてあげたりと丁寧な付き合いが必要でしたが、A君の身体機能については深く考えることもなく自然に覚えられる技能と捉えていたところがありました。大人が始末を手伝い、処理をしてしまうことが、A君の変化する可能性を封じ込めてしまう結果となり反省が残ります。


 一方、A君にとって最も苦手とする対人面での関係の取りにくさは、一年の経過で大きく変化を見ることができました。友達と上手に遊べなかったA君は、トラブルがあるたびに自分にも相手にも気持ちがあることを学んで来たことで「入れて」と言って来た友達に、「いいよ」と言えるようにもなりました。


 反面、社会性の発達とともに勝ち負けや一番へのこだわりが認められることもあるA君です。癇癪を起しておもちゃを投げたりする行為は現在も続いており改善されなければなりませんが、まずは一番になりたかったA君の思いを保育士に、「残念だったね」と言語化してもらい受け止めてもらうことで、少しずつ諦めることを学ぼうとしています。


 今後、勝つことだけではなく負けた相手を慰めたり、他の子を応援したりする社会性を学ぶスキルを身に付けることが課題となりますが、そのような課題を保育士が一緒になって取り組んだり見守ったりすることで、A君ができたという経験を重ねて行くことが大切であると思います。


 ケ-ス会議とは子どもの行動の問題を解決することだけに終始せず、関わる大人の考え方や物の見方を軌道修正してくれるものであり、子どもの全体像を映し出す大切な時間であると改めて思いました。




田倉 輝子 先生

たくら てるこ 先生)
 
森幼児園 主任保育士

【経歴】
・横浜私立 青葉幼稚園
・池田市立 社会福祉施設 やまばと学園
・横浜市 認可保育所 森幼児園
・公益社団法人 神奈川学習障害教育研究協会 会員

障害児保育に携わること30年。
療育センターでの経験を活かし、森幼児園では統合保育を実践されております。

2013.05.01
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
あなたにピッタリなお仕事が見つかる!