保育士 / 幼稚園 / ベビーシッターの求人・派遣などの総合保育サービス【明日香】
Tel.03-6912-0015
Tel.045-316-5515
Tel.052-232-7715
Tel.06-6155-7755
「保育」のお役立ちコラム

保育実践記録を物語風に

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
つい先日、保育士の研究会がありました。
その時に、レポートが報告されました。それは、次のようなレポートでした。
 
【0歳児】 Y男について
4月 ・入園当初から、泣いて要求することがなかった。
   ・名前を呼ばれると振り返ってその人の顔をみるが、それ以上の反応は
    ない。
   ・保育士に甘えることもなかった。
5月 ・「おいで」と誘うが、手は出ない
6月 ・目の前におもちゃを置いてみる。おもちゃを取ろうと手を伸ばすが、
    届かないことがわかるとすぐにあきらめる。
   ・体全体の筋力も弱く、自分から動こうとすることがなく、座っている
    か、あお向けの姿勢でいることが多い。
   ・腹ばいにさせるといやがって泣く。
   ・寝返りの練習を毎日行うことにしたことで、自分から動くように
    なる。
   ・柵につかまり立ちをさせてみる。腰は不安定だが、嬉しそうに笑う。
   ・柵に鈴をつけてやる気を引き出すようにした。
7月 ・トンネルをくぐっている子が、穴から顔を出すと、キャッキャッと声
    を出して笑う。
   ・保育士が、要求を抱いてしっかりうけとめるようにした。
   ・お腹が空いた時や眠い時などに、泣いて訴えるようになる。
   ・担当保育士を求めて、泣いたりする時もある。
   ・食事の時、味のないおかゆを嫌がり、泣いて怒る時もある。
 
《考察》
 Y男は、大人との関係が稀薄。表情が少ないし引き出せない。母親は、動かなくて楽と考えている。ベッドのサークルに置いたまま、平気で離れる。
 仮説として、「体を動かすことが出来るようになれば、意欲も引き出せるのではないか?」と思い、働きかける。少しずつ自分から動くようになり、表情も出て来て担当保育士との関係もできつつある。抱かれることが嫌いだったのが、抱かれる心地よさがわかりかけている。泣いた時に、すぐ受け止めてきたことがよかった。
 愛着関係をどうつくるか?が、課題なのではないか。
 
このレポートを受けて、私はこの保育士にいろいろな質問をしていきました。
その質問と、このレポートをもとに私が書き直したものが次のものです。
 
 
7月現在、11ヶ月となるY男は、
入園当初から、「泣いて要求する」「保育士に甘える」などのことがなかった。
「おいで!」と保育士が誘っても、手が出てこなかった。
Y男の母親は公務員のキャリア組であり、父親は大手の大企業に勤めている。
2歳の姉もこの保育園に通っていたが、1歳後半の保護者会の時みんなの前で、
「うちのやり方という順番があり、これをやったらこれ、次はこれという形で順番が決まっているんです。それらが全部終わったら、抱っこしてあげるよと子どもにわからせると、子どもは静かに待っていますよ。皆さんも、やってみたらどうですか?」
と、自信満々で話した。
しかし、その2歳児の姉は、他者に対して思いやりのない面が見られる。
姉自身は、家庭で母親の期待にこたえようとするあまり、
そのストレスを保育園で発散しているようであった。
それに対して、Y男は我慢することを通り越して、自分の思いや要求がどこにあるのかがわからない
という育ち方をしているのではないかと思えた。
 
こうしたことから、私たちは、6月に意図的におもちゃを少し話して置いてみることにした。
しかし、手を伸ばすが届かないことがわかると、すぐあきらめてしまっていた。
よく観察してみると、体で手を支えるという体幹の力に欠けているようであった。
 そこで私たちは、次のような仮説を立ててみた。
  ①意欲を曳き出すためには、まず身体が動けるようにしてあげることが必要
  ②動けるようになってはじめて、欲求が出てくるのではないか?
このような仮説のもと、6月から7月にかけて、Y男に次のような働きかけをしてみたところ、
このような変化が起きた。
  ①寝返りの練習を毎日させる→自分から動くようになる
  ②棚につかまり立ちをさせる→腰は不安定だが、うれしそうに笑う
そしてその後は、トンネルをくぐっている子が穴から顔を出すと、キャッキャッと声を出して喜んだり、
お腹がすいた時や眠い時に、泣いて訴えるようになっていった。
 
7月現在、両手で柵をつかみ、腰をうかせて立とうとしている。
また、母親も子どもをかわいいと思うようになり、あやすようになってくれた。
「何回もすると、喜ぶんですねー」との一言。
姉の時には出来なかった子育ての学び直しが母親の中ではじまったようであった。
ここで私たちが深めたいのは、
「愛着行動から愛着プロセス」「他者への眼を開かせていく関係づくりとはどういうものであるか」
ということである。今後の課題としたい。
 
 
このY男の両親ともが、いわゆる世間で言うエリートです。
エリートが悪いとは言わないのですが、「やればできる」という成功体験を重ねるにつれ、
子育てさえも、「効率よく進めたい。思ったように進めていきたい」という思いが強くなりがちのようです。
(この考えは、現在かなり一般的に広がっているように思えます)
体で子どもにぶつかる、理屈抜きで子どもを抱きしめるということが、
小さい時には大事なのだということを、いかにわかってもらうかが、
大きなポイントなのだと思うのです。
頭で考えるのではなく、無条件で子どもを愛することを、今の親に伝えることは、
とても難しいことですが、とても大切なことだと思うのです。
 
そうしたことや、保育士の思い、子どもの成長、親の成長。
そうしたものが、最初のレポートでは非常にわかりづらいように思うのです。
記録を、自分の思いを溶かし込んで、物語風に書いてみて下さい。
きっと、子どものことがもっと見えるようになるはずです。
 

 

増田 修治 先生
(ますだ しゅうじ 先生) 
 
白梅学園大学子ども学部子ども学科准教授。
小学校教諭、埼玉大学非常勤講師をご経験。
2001年に「児童詩教育賞」受賞。
こどもたちに「ユーモア詩」を書かせるなど、子育てに関
しての講演、著書出版などでご活躍され、NHK「にんげん
ドキュメント」、テレビ朝日「徹子の部屋」でも紹介されまし
た。
著書には『子どもが育つ言葉かけ』『笑って伸ばす子ども
の力』 『子どもが伸びる!親のユーモア練習帳』『子ども
が育つ言葉かけ』 『笑う子育て実例集』など。

2011.08.01
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
あなたにピッタリなお仕事が見つかる!