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「保育」のお役立ちコラム

障害のある子を育てるお母さんの気持ち(11月)

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A君は、2歳児クラスからの4年間を園で過ごしました。現在は、小学校の特別支援学級に通う男の子です。入園当初より落ち着きがなく直ぐに手が出てしまう乱暴な子どもという印象が強く、クラスの中は常に緊張感が漂い、担任はA君の一挙手一動に目が放せませんでした。3歳児クラスに進級しても予測できない行動は増々激しいものになり、担当は再三にわたり保護者にA君の様子を伝えてきましたが、共通理解ができぬままに年度が変わろうとする矢先のことでした。


予測もしていなかった事態
 年少組での生活も残りわずかという頃、担当はA君の行動に歯止めがかけられず、他の子への危害を防ぐのが精一杯の毎日でした。そんなクラスの状況に周囲の保護者は当然のことですが不満を抱いていました。また、乱暴なA君に対してもっとしっかりしつけをするように求められました。特に女児の保護者の方々からは、顔にでも傷をつけられたら大変と苦情が多く、もはや担任だけでは解決がつかず、主任が窓口となり保護者の対応をしました。

 一方、一部の保護者の間では、園には任せておけないとA君のお母さんを呼び出し、もっと子どもに関わってあげるようにアドバイスをしようという話しにまでなっていました。A君のお母さんは、クラスの保護者から子どものことで自分が呼び出されることになりかなりショックの様子でした。2年間、A君のことで何回か面談をしてきましたが、一度も「心配はしていない」と言っていたお母さんが、初めて自ら職員室の扉を叩いてくれました。この件に関しましては、園が関わっているわけではありません。「行くか行かないかはお母さんが選べます」と伝えますといくらか気持ちが楽になったお母さんは、結局呼び出しには応じなかったようです。以後、A君の一日の様子をノ-トに書かせてもらうことにしました。こうしてお母さんとはノートを使ってできるだけA君について意見交換ができるように心掛けました。

コミュニケ-ションの手段
年中組に進級して一か月が経った頃、A君について心配はないと言っていたお母さんが数ペ-ジにも及び家族旅行に出掛けた時のことを記してくれました。一部をそのまま抜粋させていただきます。



私は、この日のノ-トを読み、面談をして話しを聴かせてもらうことも大切なコミュニケ-ションの手段ではありますが、人によっては書くことで自分の思いが吐き出せることもあるということがよく分かりました。話すより書くことで思いを伝える手段も立派なコミュニケ-ションであり、A君のお母さんとはノ-トがコミュニケ-ションをとる橋渡しとなってくれました。

専門機関の受診に一歩が出ないお母さん
 A君が年中組に進級をして間もなく、ノ-トに療育センタ-のシステムを大まかに書かせてもらいました。お母さんは、A君にとって何等かの専門機関の受診が必要なのかも知れないと思い始めてはいましたが決心がなかなかつきません。進級からすでに8か月が経った11月のことでした。お母さんは「目をパチパチさせたり頭を振ったりするので前髪を切ってみました」とノ-トに書いてきました。この時期、園でも同じような症状が出ていました。チックと思っていないお母さんには再度、専門機関への受診を勧めてみました。ここまで受診に時間がかかってしまったのには父、祖父のA君に対する無理解が大きな壁になっていました。
 
 ある日、お母さんからA君のお父さんに会って欲しいと申し入れがありました。早速、父母と三者面談を行うことになりましたが「Aは自分の小さい時にそっくりだ」と言うお父さんに専門機関の必要性を理解してもらうことはできませんでした。しかし、最後に「どうしてもと言うなら行けばいい」とお母さんに言ってくれた一言にお母さんは、やっと療育センタ-の受診を決心することができました。

進路の選択
 A君は、年長児の1年間を週に1回少人数でのグル-プ活動を行う児童ディサ-ビスに通うことになりました。活動の中でコミュニケ-ションの基礎(相手の名前を呼びかける等)を経験的に確認していったり適切・不適切のフィ-ドバックを行い、A君の理解を深めて行く取り組みがなされました。

 一方、療育センタ-に通い始め親同士が情報交換をし、わが子を見る目に変化が出てきたお母さんは、徐々にA君の進路について考えるようになりました。就学相談の時期を迎え養護教育相談所の判定の結果は、情緒面のフォロ-が必要であり1,2年生の時は、個別でゆっくり学校に慣れて欲しいという意見でした。

 お母さんは、専門機関の意見に従いたいと思っていましたが、ここでもお父さんは、お母さんの思いには否定的でした。さらに進路を考える上でお母さんは、A君と同じ学校に通う姉が、弟のことで傷ついてしまうことはないだろうかと心配をするようになりました。お母さんは、率直に姉の思いを聞いたところ、まったく気にする様子もなく「Aみたいな子、クラスにもいるよ」と明るく言ってくれ、特別支援学級を選択するにあたり姉の存在は、お母さんにとりましては大きなものとなりました。この姉の後押しもあり、お父さんは納得こそしていませんが、それ以上の反対もせずA君の進路が決定されました。

 就学相談では、特別支援学級を勧められていてもせめて低学年の間だけでもと無理を承知で通常の学級に入学するお子さんは少なくありません。勉強の内容が抽象的になる3年生ぐらいで特別支援学級への移行を考え始めるケ-スも少なくないと聞いています。A君のお母さんも当然、普通学級を選択するものと思っていましたが、A君が一番生き生きと生活できる場所として迷わず特別支援学級を選びました。

A君との再会で見えたもの
 A君が2年生に進級した5月。A君の通う学校に出向く機会がありました私は、廊下でA君に声を掛けられました。目の前にはぐんと背が伸びたA君が、特別支援学級の1年先輩(保育園が同じでした)のB君と仲良く肩を組んで歩いてきました。「元気にしている?」「学校楽しい?」の質問にA君がB君の顔を覗き込むようにしながら「楽しいよな」とB君に相槌を求める姿を見て、予想以上に成長しているA君に「頑張って付いて行く」より「のんびり楽しく進む」方が良いとお母さんが選んだ道を日々、楽しく過ごしているのが手に取るように分かりました。

お母さんのA君に対する障害受容というのはプロセスでしかなくゴ-ルではありません。
子育て全般に厳しい社会の中で、障害のある子を育てるお母さんの負担が、少しでも軽減されるよう社会的な支援がもっと充実し、地域の中でA君がますます元気にたくましく生活できるように、周囲の理解がお母さんの追い風になってくれたらと願います。





田倉 輝子 先生
(たくら てるこ 先生)
 
森幼児園 主任保育士

【経歴】
・横浜私立 青葉幼稚園
・池田市立 社会福祉施設 やまばと学園
・横浜市 認可保育所 森幼児園
・公益社団法人 神奈川学習障害教育研究協会 会員

障害児保育に携わること30年。
療育センターでの経験を活かし、森幼児園では統合保育を実践されております。


2013.11.01
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